近年、情報システム業界でも「デザイン思考」(Design Thinking)という言葉を耳にする機会が増えています。 「デザイン思考」は、もともと、いわゆる「デザイナー」と言われる方々が、(世の中にない)製品やサービスを創造する際に実践している「思考法」「ツール」「テクニック」などを整理・体系化し、「デザイナーではない人」にも再現、実践できるようにしたものです。
昨今では、その有用性が情報システムの開発現場を含む、経営、ビジネス、業務の領域へ、また教育、地域などあらゆる領域へ広がりを見せています。「デザイン思考」の具体・詳細は、数多の良書にお任せするとして、拙稿での理解として、Plaza-iの現場での適用と期待効果を考察したいと思います。
「デザイン思考」は、「人(≒顧客、ユーザ、≠製品・サービス)を中心に考える」「正しく問題定義し、正しい問題解決を導く」「コンセプトを生み出す」「(言葉で考えるのではなく)形にして、考える」「早く失敗し早く学ぶ」「正しく試行錯誤する」などのマインドセット(思考、考え方)を重要視し、その進め方(プロセス)は「共感(Empathize)」「問題定義(Define)」「問題解決(Ideate)」「試作(Prototype)」「検証(Test)」の 5 つのステップがあり、各ステップを速く、繰り返し行う、とされています。
システム開発・導入では、「要件定義」「設計」「開発」「テスト」のプロセスを「できるだけ手戻りなく進める」ことが是とされています。いわゆる「ウォーターフォールモデル」、「V字モデル」として般化されています。
これは、(要件定義で)作ると決めたものを要求品質(納期、品質、コスト)通りに完成させる上で、優れた手法であるとされています。 ただ、これには「要件定義」≒システム化すべき要件(問題・課題)の定義が正しく行われている、そして、その要件定義を受けて「設計」が正しく行われているという暗黙の前提があります。
システム開発・導入の「品質」は、上流工程である「要件定義」「設計」の工程が極めて重要であり、システム開発の現場では、この「ウォータフォール」を成立させるべく、当事者(開発者(Developers)、運用者(Operations))の間で、言外の試行錯誤や調整が、スケジュールの制約の中で繰り返し行われているものと思料しますが、こうした状況の中で、時に「スケジュール内に開発するモノを決めること」に要件定義のゴールがすり替わってしまい、結果、後工程、ひいては完成(後)の品質への悪い影響の原因となってしまうことがあります。
「要件定義」を解決すべき問題を正しく理解し定義することとすると、「デザイン思考」における「共感」「問題定義」のプロセスは非常に多くの示唆を得ることができます。
「デザイン思考」の「共感」は、「観察」「洞察」することから始まり、「ヒト」の「発言」「行動」から、「体感」(五感)を推測し、「思考」「感情」を推測します。「思考」「感情」を「ポジティブ」「ネガティブ」に分けて、「ネガティブ」の中から問題課題を推測し、定義します。こうして「共感」「問題定義」のプロセスを進めていきます。
「共感」という一見、感情的、属人的(人それぞれ)な行動について、相当に具体化されているところに驚嘆します。 システム開発、とりわけ「要件定義」の現場では、「現状分析/ヒアリング」として進めている中で、確かにこのような状況は、経験的にも思い返すことができ、「ヒト」の(不完全な)「言っていること」や「行動していること」から、問題を正しく定義する方法として多くの示唆を得ることができます。
Plaza-i は「販売」「購買」などの業務管理を目的とするシステムであることから、その要件定義(適用設計)、導入設計は、部門単位(対象)、業務単位(対象)に進めていくことが多いですが、「部門」や「業務」を対象にする/その中で業務をする「ヒト」(ペルソナ)を対象にするというアプローチをする(あるいはその観点をもつ)ことは、「問題(要件)を正しく理解する/問題(要件)を正しく解決する」ことに寄与し、Plaza-iの導入効果を高める期待効果があると言えます。
また「デザイン思考」における「試作」「検証」のステップは、システム開発において「プロトタイプ」や「パイロット」(試験的な、先行する、試作などの意。「CRP(Conference Room Pilot)」も同義。)の手法が類似性、親和性が高く、Plaza-i でも多くの事例があります。
CRP(Conference Room Pilot):会議室(Conference Room)で実機、実データを用いて試行・検証する(Pilot)。 実機・実データを用いて事前に試行・検証することで、機能の理解を促進し、新システムによる業務イメージの解像度を上げ、理解齟齬をなくす効果が期待できます。
これにより基本機能を最大限に活用し、追加カスタマイズを最小限にする。結果、投資効果を最大化することが期待できます。 これは実機・実データを用いず事前の試行・検証を進める、多くの場合「文書ベースによる要件定義/設計」と比較すると、その期待効果が解りやすいと思います。
創意工夫する、趣向を凝らす、意匠を凝らす。これらは「デザインする」と同義であるとされています。毎日のビジネス活動、業務活動のそこかしこ(モノ・コトとヒトとの接点)に「デザイン」の機会や成果があり、「デザイン思考」の機会があると言うことができます。
Plaza-iの業務活動の中で、「デザイン思考」を見よう見まねで取り入れつつ、よりよいモノ・コトを創造すべく、取り組んでいきたいと思います。
参考文献: 廣田章光『デザイン思考』日経BP日本経済新聞出版(2024)
経済産業省・特許庁 産業競争力とデザインを考える研究会(2018)『「デザイン経営」宣言』
経済産業省・特許庁 特許庁 我が国のデザイン経営にかんする調査研究事業『デザイン経営ハンドブック』