中小企業にとって、ERP導入とはどのようなものでしょうか?
いきなり大きなテーマを掲げてしまいましたが、多くのお客様で悩まれている課題ではないかと思います。
中小企業では一般的に、大手企業に比べて情報システムにかける投資が限られているため、コスト重視となる傾向にあります。各業務ブロックに適応したコンパクトなパッケージを導入し、それを外部データの切り出し&取込み等により、システムを連携して利用しているケースが多くみられます。
可能なら、本格的なERPパッケージを導入して、データの一元化を進め、統合的な管理ができるようにしたいところですが、それもままならない。
しかし、今こそ、中小企業におけるERP導入の機運が高まってきていると言えます。
それは、なぜか?それを今から、紐解いていきましょう。
まず最初に、「中小企業とは」について、記述しておきます。
中小企業基本法によると、その第二条で、中小企業者の定義が書かれています。
業種によって異なりますが
製造、建設、運輸、情報、 その他 |
…資本金3億円以下又は従業員数300名以下 |
卸売業 | …資本金1億円以下又は従業員数100名以下 |
サービス業 | …資本金5,000万円以下又は従業員数100名以下 |
小売業 | …資本金5,000万円以下又は従業員数50名以下 |
などと定義されています。
ゴム製品製造業だけは、資本金3億円以下又は従業員数900名以下、と特別に範囲が広いようですが、いずれにしても、自社がこのくらいの規模に当てはまる会社かどうかで、判断していただければと思います。
もちろん、この範囲を超えていても、当てはまる企業は数多くあります。ここでの説明においても、本来なら「中堅または中小規模の企業」とすべきところですが、それらを略して、「中小企業」と呼ぶことにします。
一方ERPですが、これは Enterprise Resources Planning(企業資源計画)の略で、一般的には、統合基幹業務システムと訳されています。組織の業務プロセスを効率化し、経営資源を最適に管理するための統合的なソフトウェアソリューションで、ERP導入はビジネスの成長と競争力の向上に寄与する重要なステップです。
ERPでは、それまで現場が起こした伝票を経理部門が入力するなどしていた状況から、現場が直接入力し、そのデータを経理部門や経営幹部が見れるようにする、ということを狙っていました。1990年代からそういった機運が高まり、日本では2000年前後にERPブームが起きました。当初は海外製のパッケージを大手企業中心に導入していったのですが、日本の商慣習に合わない部分があったりで、個別カスタマイズの規模が大きくなり、数億、数十億円といった規模の導入も珍しくありませんでした。
当然、一般の中小企業で、おいそれと導入できる金額ではありません。
しかし、ここに大きな市場があると考えた日本のベンダー各社が、日本企業にあったERPを開発し始めました。今では国産のERPパッケージが数多く占め、ERP市場の重要な位置づけになっています。だが、なぜ、中小企業で、ERPが導入されるようになってきたのでしょうか?
1980年代から続いていたオフコン時代もパソコン、Windowsに押されて失速し始め、1990年代はプラットフォームの見直しが進んでいる状況でした。
このような背景のもと、ERPを開発していた日本のベンダーは、日本の商慣習に合ったものを、ということで、海外製パッケージにない機能を盛り込んでいきました。
徐々にすそ野が広がっていきます。今まで大手企業中心だったのが、国産パッケージの出現により、コスト面での競争が激しくなり、導入価格帯のレンジが下方に広がっていきました。そうなると、中小企業でも十分導入可能な範囲になってきます。
本来ERPは、販売、生産、物流、会計、人事等、企業にとって基幹となる業務をシステムで統合し、情報の一元化を図るシステムのことです。ただ多くのベンダーは、自社の得意とする業務ブロックを単体で導入するところから始め、その他の業務ブロックは、他社パッケージと連携する形で販売を開始していきました。
本来の意味からすると、ERPパッケージとは呼べないものですが、広義のERPととらえられていたようです。2000年頃は、上記のような業務ブロックをワンパッケージで提供できるところは多くはなかったと記憶しています。
そこからの進展は目覚ましいものがありました。
ベンダーにおいては、自社で開発し、顧客に導入した基幹業務システムを焼き直して、汎用化、パッケージ化を進め、リリースした後に徐々に機能を揃えていく。そうすることで、初期投資を抑え、かつ機能を整備していくことができ、現在のような、中小企業向けのERPパッケージが行き渡るようになっていきました。
中小企業向けERPの特長は、なんといっても、投資対効果の高さにあります。
中小企業は限られた予算内で最大限の価値を得る必要があります。コストに関しては、大手企業に比べると非常にシビアです。それも、すぐに成果を出す必要があります。
中小企業向けERPを開発するベンダー自体に中堅・中小規模の企業が多いのは、一般管理費や販売間接費などの間接コストを極力抑え、原価低減努力をしやすい環境にあることも起因しているかもしれません。
また、成長や変化に対応できる拡張性とカスタマイズ性を備え、かつ、それに対応する柔軟性を持っているのも、中小企業向けERPの特徴です。いわば、足回りの軽さ、とでも言いましょうか。
さらに、パッケージ標準機能を適用できる範囲が広いのも、中小企業向けならでは、です。
大手企業ですと、長年の商慣習をなかなか変えられず、必然的にカスタマイズが膨れ上がっていきますが、中小企業においては、こだわる部分はありますが、総じてパッケージに合わせられるところは合わせる、といった指向が強いように感じます。こういったところも、全体コストを抑えて早期に効果を出す、といった特性につながっているのでしょう。
ERP導入のメリットですが、まずは「業務プロセスの効率化」が挙げられます。
重複するタスクを自動化し、時間とコストを削減します。これにより、「業務の標準化」につなげることもできます。
2点目は、「リアルタイムのデータアクセス」です。現場で投入したデータを即座に、関連部門や管理部署で確認することができ、正確なデータに基づく、問題点の早期把握や迅速な意思決定をサポートします。
3点目は、「経営の透明性」です。データの一元管理により、経理部門や経営幹部が即座に確認することができ、財務や業務のパフォーマンスを明確に把握できます。
このような中小企業向けERPですが、実際に導入する時には、どのような課題があるのでしょうか?
中小企業といえども、ERP導入には相当のコスト、期間がかかり、難しさを伴います。
よくある失敗例は、例えば、以下のようなものです。
・業務要件をきちんと詰めずにプロジェクトをスタートし、あとからカスタマイズが膨れ上がる。 ・コスト重視が強すぎて、要件を満たさないパッケージを選んでしまった。 ・導入ユーザ側にシステム導入プロジェクトをコントロールできる人材がおらず、現場がついてこない。 ・ベンダー側も同様で、ユーザの業務への理解度が低く、業務要件の実現手段が不明確。 などなど。 |
ここでその解決策のすべてを書き出すことは難しいですが、主なポイントを以下に記します。
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最後に、中小企業向けERP導入を成功に導くためのヒントをまとめます。
上記と重なる部分もありますが、そこはご容赦ください。
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いかがでしたでしょうか?
ERPという言葉が定着して久しいですが、その導入にあたっては、多くの方がいまだに大変苦労されています。特に中堅・中小規模の企業にとっては、その成否は死活問題。
ひとつひとつリスクを潰していきながら、導入、運用していけるよう、是非、チャレンジしてみてください。
※参考:ポストコロナ時代における規模別・業種別に見た中小企業の経営課題に関する調査結果(全国中小企業振興機関協会)