2024.04.30

ERPシステムと中小企業

中小企業のERP導入率は20%を超えており、ERP導入は着実に進みつつあります。一方で「利活用できている」という割合が減少しているとの調査結果※もあります。

そこで中小企業にとってのERPとは何か。中小企業がERPシステム導入を考える際のメリットや課題、また成功のヒントをお伝えします。

はじめに

中小企業にとって、ERP導入とはどのようなものでしょうか?
いきなり大きなテーマを掲げてしまいましたが、多くのお客様で悩まれている課題ではないかと思います。

中小企業では一般的に、大手企業に比べて情報システムにかける投資が限られているため、コスト重視となる傾向にあります。各業務ブロックに適応したコンパクトなパッケージを導入し、それを外部データの切り出し&取込み等により、システムを連携して利用しているケースが多くみられます。

可能なら、本格的なERPパッケージを導入して、データの一元化を進め、統合的な管理ができるようにしたいところですが、それもままならない。
しかし、今こそ、中小企業におけるERP導入の機運が高まってきていると言えます。
それは、なぜか?それを今から、紐解いていきましょう。

中小企業の定義

まず最初に、「中小企業とは」について、記述しておきます。
中小企業基本法によると、その第二条で、中小企業者の定義が書かれています。

業種によって異なりますが

製造、建設、運輸、情報、
その他
…資本金3億円以下又は従業員数300名以下
卸売業     …資本金1億円以下又は従業員数100名以下
サービス業             …資本金5,000万円以下又は従業員数100名以下
小売業                 …資本金5,000万円以下又は従業員数50名以下

などと定義されています。

ゴム製品製造業だけは、資本金3億円以下又は従業員数900名以下、と特別に範囲が広いようですが、いずれにしても、自社がこのくらいの規模に当てはまる会社かどうかで、判断していただければと思います。

もちろん、この範囲を超えていても、当てはまる企業は数多くあります。ここでの説明においても、本来なら「中堅または中小規模の企業」とすべきところですが、それらを略して、「中小企業」と呼ぶことにします。

ERPの定義と黎明期

一方ERPですが、これは Enterprise Resources Planning(企業資源計画)の略で、一般的には、統合基幹業務システムと訳されています。組織の業務プロセスを効率化し、経営資源を最適に管理するための統合的なソフトウェアソリューションで、ERP導入はビジネスの成長と競争力の向上に寄与する重要なステップです。

ERPでは、それまで現場が起こした伝票を経理部門が入力するなどしていた状況から、現場が直接入力し、そのデータを経理部門や経営幹部が見れるようにする、ということを狙っていました。1990年代からそういった機運が高まり、日本では2000年前後にERPブームが起きました。当初は海外製のパッケージを大手企業中心に導入していったのですが、日本の商慣習に合わない部分があったりで、個別カスタマイズの規模が大きくなり、数億、数十億円といった規模の導入も珍しくありませんでした。

当然、一般の中小企業で、おいそれと導入できる金額ではありません。
しかし、ここに大きな市場があると考えた日本のベンダー各社が、日本企業にあったERPを開発し始めました。今では国産のERPパッケージが数多く占め、ERP市場の重要な位置づけになっています。だが、なぜ、中小企業で、ERPが導入されるようになってきたのでしょうか?

中小企業向けERPの誕生

1980年代から続いていたオフコン時代もパソコン、Windowsに押されて失速し始め、1990年代はプラットフォームの見直しが進んでいる状況でした。
このような背景のもと、ERPを開発していた日本のベンダーは、日本の商慣習に合ったものを、ということで、海外製パッケージにない機能を盛り込んでいきました。

徐々にすそ野が広がっていきます。今まで大手企業中心だったのが、国産パッケージの出現により、コスト面での競争が激しくなり、導入価格帯のレンジが下方に広がっていきました。そうなると、中小企業でも十分導入可能な範囲になってきます。

本来ERPは、販売、生産、物流、会計、人事等、企業にとって基幹となる業務をシステムで統合し、情報の一元化を図るシステムのことです。ただ多くのベンダーは、自社の得意とする業務ブロックを単体で導入するところから始め、その他の業務ブロックは、他社パッケージと連携する形で販売を開始していきました。

本来の意味からすると、ERPパッケージとは呼べないものですが、広義のERPととらえられていたようです。2000年頃は、上記のような業務ブロックをワンパッケージで提供できるところは多くはなかったと記憶しています。

そこからの進展は目覚ましいものがありました。
ベンダーにおいては、自社で開発し、顧客に導入した基幹業務システムを焼き直して、汎用化、パッケージ化を進め、リリースした後に徐々に機能を揃えていく。そうすることで、初期投資を抑え、かつ機能を整備していくことができ、現在のような、中小企業向けのERPパッケージが行き渡るようになっていきました。

中小企業向けERPの特長

中小企業向けERPの特長は、なんといっても、投資対効果の高さにあります。
中小企業は限られた予算内で最大限の価値を得る必要があります。コストに関しては、大手企業に比べると非常にシビアです。それも、すぐに成果を出す必要があります。

中小企業向けERPを開発するベンダー自体に中堅・中小規模の企業が多いのは、一般管理費や販売間接費などの間接コストを極力抑え、原価低減努力をしやすい環境にあることも起因しているかもしれません。

また、成長や変化に対応できる拡張性とカスタマイズ性を備え、かつ、それに対応する柔軟性を持っているのも、中小企業向けERPの特徴です。いわば、足回りの軽さ、とでも言いましょうか。

さらに、パッケージ標準機能を適用できる範囲が広いのも、中小企業向けならでは、です。
大手企業ですと、長年の商慣習をなかなか変えられず、必然的にカスタマイズが膨れ上がっていきますが、中小企業においては、こだわる部分はありますが、総じてパッケージに合わせられるところは合わせる、といった指向が強いように感じます。こういったところも、全体コストを抑えて早期に効果を出す、といった特性につながっているのでしょう。

中小企業向けERP導入のメリット

ERP導入のメリットですが、まずは「業務プロセスの効率化」が挙げられます。
重複するタスクを自動化し、時間とコストを削減します。これにより、「業務の標準化」につなげることもできます。

2点目は、「リアルタイムのデータアクセス」です。現場で投入したデータを即座に、関連部門や管理部署で確認することができ、正確なデータに基づく、問題点の早期把握や迅速な意思決定をサポートします。

3点目は、「経営の透明性」です。データの一元管理により、経理部門や経営幹部が即座に確認することができ、財務や業務のパフォーマンスを明確に把握できます。
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このような中小企業向けERPですが、実際に導入する時には、どのような課題があるのでしょうか?

中小企業向けERPの導入課題と解決策

中小企業といえども、ERP導入には相当のコスト、期間がかかり、難しさを伴います。
よくある失敗例は、例えば、以下のようなものです。

・業務要件をきちんと詰めずにプロジェクトをスタートし、あとからカスタマイズが膨れ上がる。

・コスト重視が強すぎて、要件を満たさないパッケージを選んでしまった。

・導入ユーザ側にシステム導入プロジェクトをコントロールできる人材がおらず、現場がついてこない。

・ベンダー側も同様で、ユーザの業務への理解度が低く、業務要件の実現手段が不明確。

などなど。


ここでその解決策のすべてを書き出すことは難しいですが、主なポイントを以下に記します。

  1. 導入ユーザ企業内で業務要件をまとめる
    RFP(提案依頼書)をまとめるのがベストです。RFPを作成するとなると、現状の業務分析と課題整理から入り、現場や経営幹部へのヒアリングを通じて、目指すべきゴールラインが見えてきます。ベンダーサイドからすると、RFPを提示された案件は、提案にそれ相当の労力がかかってしまいますが、総じて失敗は少なくなります。

  2. 初から理想を追いかけない
    やりたいことがいっぱい出てきても、すべてを一度に実現しようとせず、段階的にシステムを拡張していくことをお勧めします。初期投資はスモールスタートで!

  3. コストだけでベンダー選定をしない
    出銭を減らしたい思いはどなたにもあると思いますが、ベンダー選定においては総合的な判断が必要です。業務要件に見合ったシステムか?ベンダー側の導入チームの体制は十分か?トータルコストで見た場合の将来の保守性はどうか?
    など、評価ポイントを洗い出して、点数化してみると客観的評価ができていいかもしれません。

  4. できるだけ早い段階で、操作・運用イメージを確認する
    本番立ち上げになって、あれができない、これができない、といったトラブルが発生することがあります。望ましいのは、フィット&ギャップの段階で、可能な限り、実データを用いてシステムの動作確認をすること。それも現場の方を交えて、です。そうすることで、早期に運用のイメージが湧き、ユーザとベンダー間の齟齬をなくすことができます。

成功のためのヒント

最後に、中小企業向けERP導入を成功に導くためのヒントをまとめます。
上記と重なる部分もありますが、そこはご容赦ください。

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  1. ニーズの詳細分析
    自社の現在と将来のビジネス要件を詳細に分析し、それに合致するERPシステムを選択することが不可欠です。経営トップの意見だけを聞くと、現場がついてこないシステムになる危険があります。一方、現場の意見ばかりを聞くと、ちぐはぐなシステムになる可能性もあります。関係部署・職位の方々の意見をよく確認し、それを書きものとしてのRFPにまとめ上げることを検討ください。

  2. コストとリターンの検討
    導入費用、運用費用、期待されるリターンを総合的に評価し、予算内で最大の価値を提供するシステムを選定します。ただし、コストだけで判断しないことです。上述の通り、業務要件との適合性、将来を見越した保守性なども重要です。総合的、客観的に評価されることを期待します。

  3. 従業員の意見を反映
    それも早期に、です。できれば、フィットアンドギャップの時に、実データを用いた検証を行うことをお勧めします。それを現場の方にフィードバックする。そうすることで、関係部署間の「ギャップ」をなくせる、と信じています。

  4. 段階的な導入と評価
    全部門に一斉導入するのではなく、選ばれた部門やプロセスから始めて、段階的に拡張することでリスクを管理します。規模が大きくなるにつれて、一斉本稼働のリスクは大きくなります。段階的に立ち上げることにより、顕在化した問題をひとつひとつ潰していき、大きな損失を防ぐことが可能になります。

  5. 継続的なトレーニングとサポート
    社員がシステムを最大限に活用できるように、定期的なトレーニングとサポートを提供していきます。ここでは、ベンダーの支援も非常に重要なポイントです。

  6. パートナーシップの構築
    ERPベンダーとの長期的なパートナーシップを築き、継続的なサポートとシステムのアップデートを受けることが重要です。法改正などに伴うバージョンアップにしっかり対応できるベンダーであれば、将来も安心です。そういったベンダーを選ばれることを、是非、お勧めします。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
ERPという言葉が定着して久しいですが、その導入にあたっては、多くの方がいまだに大変苦労されています。特に中堅・中小規模の企業にとっては、その成否は死活問題。
ひとつひとつリスクを潰していきながら、導入、運用していけるよう、是非、チャレンジしてみてください。

※参考:ポストコロナ時代における規模別・業種別に見た中小企業の経営課題に関する調査結果(全国中小企業振興機関協会)

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