2024.06.06

SE日記 Vol.7 【あなた達は業者ではない、我々のパートナーだ!】

キーマン

第7回のテーマは『あなた達は業者ではない、我々のパートナーだ!』です。

メイン担当SEが離脱!そのピンチヒッターに

今回はこれまでと違い、自分がメイン担当ではなかったお客様でのお話です。
このお客様は、まったく異なる2つの製品体系を扱う輸入商社で、異なるビジネスモデルに対してどのようにシステムを適用していくか、が課題でした。

担当していたのは、私の部下で、非常に優秀なSEでした。多くの経験を積んでおり、
見識もあり、お客様のシステム立上げに最適な人材でした。

そもそも、受注できた最大の要因は、営業時に担当していたプレSEが、現状の課題整理や未来ビジョンへの言及など、お客様目線で説明を重ねていき、お客様から大変気に入られたことでした。そのような経緯での受注だったので、「プロジェクト開始と同時に評価を落とすわけにはいかない、これはエース級を投入しなければ」と自信をもって送り込んだSEです。
フィットアンドギャップから要件確定、追加カスタマイズなどをオンスケで順調に進め、
お客様からも高い信頼を得ていました。

ところが、プロジェクトも後半を迎え、そろそろデータ移行、操作教育などの本稼働準備に入ろうとしていた頃、その担当SEが体調不良で業務に従事できなくなってしまいました。
それも少々深刻で、長期離脱をせざるをえない状況です。そうなると、代わりのSEを立てなければいけません。

当時、私は管理職に就いており、複数の異なる案件を見ていましたが、上司に「お前がやるしかないだろう。」と言われ、私がそのピンチヒッターに立つことになりました。

キーマンとの密なコミュニケーションで乗り切る

お客様のシステム要件は、前任者が作成した仕様書を見ればわかります。
ただ問題は、プレSEと担当SEの2人が非常に高い評価をいただいていた後に登場してきた私が、いかに評価を落とさずにこの苦難を乗り切るか、ということでした。

お客様サイドは、2つの製品の各々の営業部のマネージャー、商品管理部のマネージャーがメインでしたが、プロジェクト全体を取り仕切るのは、業務部門のトップの方でした。
この方が明らかなキーマン。先を読む目もあり、社内に常に目配りをされている、人情味のある方でした。

打合せには、普段は出席されていませんでしたが、私は、自分を知ってもらう、また安心してもらうために、打合せの終了後、毎回、そのキーマンの方の所に行って、当日の打合せの結果を口頭でお伝えするようにしました。

既にプロジェクトメンバーに対しては、スムーズに溶け込むことができていました。
また毎回、議事録を作成してお客様との間で確認もしているのですが、あえて、そのキーマンの方にポイントを絞って、今口頭でお伝えすべきこと、例えば、工程の進捗、出てきている課題とその対策方法などを5分程度で説明し、大筋での情報共有と、ご理解をいただくことに注力していきました。

すると徐々にですが、そのキーマンの方から、「あなた達を信じているから・・・」といった言葉をいただけるようになり、これは信頼をいただけてきているかな、と実感するようになりました。

操作教育を行い、現場の方々への運用指導を行っていた頃だったと思いますが、このキーマンの方から、お食事の誘いをいただきました。プロジェクトメンバーで、近くの「もつ焼き屋」に行ったのを覚えています。食事もおいしかったのですが、なにより色々な会話をして、
お客様との距離が一気に縮まった瞬間だったと思います。

実務的なところは、サブで付いてくれていた、若手SEを中心に進めていきました。そして本番を迎えた日、システムも無事に稼働し、問題なく初日を終えました。業務終了後、キーマンの方から、再び食事に誘われ、その会食の席で言われたのが、冒頭の言葉です。

「あなた達は業者ではない。我々のパートナーだ!これからも、よろしくお願いします。」

このお客様とは、その後も、お客様と当社関係者との間で、懇親会やゴルフの定期的なイベントを行うなど、非常に良好な関係が続いたことを追記しておきます。

ERP導入において重要なこと

今回のようなケースは稀かもしれませんが、プロジェクトの途中でSEが離脱することもありえます。
そのような場合、そこまで進めてきた内容をきちんと引き継ぐことは当然ですが、大事なことは
いかに、このつながりをスムーズにできるよう環境を整えるか?
お客様からの信頼を勝ち得るか?
です。

プロジェクトは、人と人とのつながりで、前に進んでいきます。
これは、なにもERPに限ったことではなく、システム導入すべてにあてはまることかもしれませんが、そういったヒューマン・コミュニケーションが非常に重要な要素である、とあらためて確信した次第です。

※本ケースは筆者の経験談であり、すべてのお客様に当てはまるものではございません。予めご了承ください。

【筆者略歴】
某大手メーカー系IT企業に35年勤務。
経営企画部門を経て、ERPパッケージの導入担当SE、及びプレ営業を15年ほど経験。その後、同パッケージの拡販推進、マーケティング、プロモーション等を担当。現在は(株)ビジネス・アソシエイツにてマーケティング業務に従事。
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