2023.08.01

インボイス制度

インボイスとは

電子インボイスとデジタルインボイス

2023年10月からインボイス制度がスタートしますが、インボイス制度への対応と共に、インボイスの電子化による電子取引を検討されている方も多いのではないかと思います。

電子取引に対応するにあたり、比較的容易にできるのは、紙で出力しているインボイスをPDFにして相手先にメールで送る方法です。このように、紙のインボイスを電子データ化したものを「電子インボイス」と言います。手軽にできる反面、紙を電子に置き換えただけで手作業によるオペレーションも残り業務としては今までと大きく変わらないことから、デジタイゼーション(Digitization)と呼ばれるデジタル化になります。

単に電子化するだけではなく、手作業を減らして業務効率を大幅に改善することを目指す場合、インボイスをデータのまま相手方に送り、関連する業務でデータを利用できるようにする必要があります。システムで自動処理することを前提にした構造化された電子インボイスのことを、「デジタルインボイス」と言います。デジタル化により業務プロセスの変革を目指すデジタライゼーション(Digitalization)と呼ばれるデジタル化になります。

デジタルインボイスのイメージ

日本でも、デジタル庁が主導してデジタルインボイスの環境が整ってきています。次のイメージ図は、デジタルインボイスにより期待される業務の流れです。

デジタルインボイスのイメージ図

 ① 売り手は、システムからデジタルインボイスを発行してアクセスポイントに渡します。

 ② 売り手のアクセスポイントから買い手のアクセスポイントにインボイスデータが流れます。

 ③ 買い手は、買い手のアクセスポイントからデジタルインボイスをシステムで受領します。

 ④ 買い手は、システムから振込データを作成し、EB(Electronic Banking)に取り込みします。 

 ⑤ 買い手のEBから売り手のEBに振り込みデータが流れます。 

 ⑥ 売り手は、EBから入金データをシステムに取り込みます。インボイスNoをキーにして、確実に入金自動消込を実行します。なお、インボイスNoを振込データで売り手に渡すには、③において、買い手の発注伝票番号などをキーにして、仕入とインボイスNoを結び付ける、経費は自動で債務計上してインボイスNoと結び付ける、といったような対応が必要になるかもしれません。

国際規格Peppol

データを企業間でやりとりする場合、送り手と受け手でデータの構造を共有しておかないと、双方でデータを利用することはできません。

そのため、インボイスなどの電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」「運用ルール」「ネットワーク」を定めた、 Pan European Public Procurement Online(Peppol、ペポル)という国際規格があります。

Peppolは国際的な非営利組織である Open Peppolが管理しています。日本のデジタル庁も、 2021年9月にOpenPeppolの正式メンバーになっています。

欧州各国のみならず、オーストラリア、ニュージーランドやシンガポールなどの欧州域外の国も含め30か国以上で利用が進んでいるグローバルな標準仕様です。Peppolネットワークに参加することで、参加する他の企業とデジタルインボイスをやり取りすることができます。

日本版Peppol

Peppolネットワークに参加すればデジタルインボイスをやり取りすることができますが、同じインボイス発行という業務でも、国ごとに商習慣の違いがあります。

例えば、締め毎に請求する合算請求書は、日本特有のものと言われています。そこで、日本では、会計・業務システムベンダーや税務・会計の専門家が参加しているデジタルインボイス推進協議会( E-Invoice Promotion Association、EIPA、エイパ)が、Peppolをベースに拡張した日本版 Peppol「 Peppol BIS Standard Invoice JP PINT」(以下、JP PINT)を作成し、2022年10月28日に正式公表しました。

アクセスポイント

Peppolネットワークでインボイスを送るには、ネットワークの入り口であるアクセスポイントからデータを送る必要があります。アクセスポイントのサービスは、Peppolの管理・運用等を行う Peppol Authorityが認定した「認定Peppol Service Provider」が提供することができます。

日本の事業者では、アルトア株式会社(弥生株式会社の子会社)、ファーストアカウンティング株式会社、富士通 Japan株式会社、株式会社マネーフォワード、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・ビジネスブレインズ、株式会社オージス総研、株式会社TKC、株式会社トラベルデータ、ウイングアーク1st株式会社が認定されています。(2023年6月14日 時点)

また、インボイスを受け取る側も、受け手のアクセスポイントからデータを受け取ることになります。今までは、企業間でインボイスをやりとりするには、クラウド請求書発行システムなどの仕組みを個別に用意する必要がありましたが、そのようなシステムが無くても、JP PINTに従ったデータをアクセスポイントと送受信すれば、Peppolネットワークを通してインボイスデータをやりとりすることが可能になります。

データを蓄積することはできない

インボイス制度では、授受したインボイスのデータを残しておく必要がありますが、Peppolにはクラウド請求書発行システムのようなデータを蓄積する仕組みは無いようです。

そのため、電子帳簿保存法に従ってインボイスデータをしっかりと蓄積しておく必要があります。なお、改ざん防止のための措置としては、「タイムスタンプ付与」や「クラウド請求書発行システムのような履歴が残るシステムでの授受・保存」といった方法以外にも、「改ざん防止のための事務処理規程を定めて守る」でも構わないとされています。

その他、「日付・金額・取引先」で検索できるようにし、ディスプレイ・プリンタ等を備え付けておけば良いので、電子取引を蓄積するためのハードルは、それほど高くはありません。

全銀EDI (DI-ZEDI)

全銀協は、2023年4月24日に、JP PINTに対応した金融EDI情報表示「DI-ZEDI(ディーアイゼディ)」を制定したことを公表しました。

DI-ZEDIが JP PINTと連携することで、インボイス番号をキーにした入金自動消込処理が可能になることが期待されています。現在も全銀協の入金データをシステムに取込みして自動消込をすることはできますが、現状の入金データにはキーとなる情報が無いため、最初に発生した売掛金から順番に消込するなど、一定のルールで消込するしかありません。

例えば、毎月定額で発生する請求とスポットで発生する請求が混在するような場合など、色々な売掛金に対してまとめて入金があると、どうしても思った通りには自動消込ができない場合があります。

このように、現在は入金消込に苦労している場合でも、JP PINT と DI-ZEDIにより、入金消込の完全自動化が実現するかもしれません。

おわりに

JP PINTは昨年に公表されたばかりですし、DI-ZEDIも今年に決まったばかりです。最初は PDFによる電子インボイスで電子取引をスタートし、各社のPeppolの利用状況を確認してからデジタルインボイスを進めるのも一つの方法かもしれません。

現在は、インボイスの送受信をサポートするSaaSが多く生まれ、今がチャンスとテレビCMなども多く流していますが、Peppolの利用が日本で広まった場合、これらのサービスの必要性が薄れる可能性もあります。

Peppolはインボイスだけでなく受発注などの他の電子文書をネットワーク上でやり取りするための仕組みであるため、日本版Peppolもインボイスからスタートして成功したら、受発注など他の電子取引にも拡張していくのかもしれません。

Plaza-iにおいても、 JP PINTや DI-ZEDIの普及状況やお客様のニーズを踏まえて、アクセスポイントへの請求データ転送、アクセスポイントからの請求データ取込、DI-ZEDIに対応した支払データの転送、DI-ZEDIに対応した入金データの取込等に対応することを検討していきます。

お役立ち資料ダウンロード_plaza-i