2023.09.07

SE日記 Vol.2【業務の説明がまるでウチの社員のようですね!】

第2回のテーマは『業務の説明がまるでウチの社員のようですね!』です。

お客様の業態を知る

今回は、前回の営業初期段階の話ではなく、お客様からご注文をいただいた後のフィット&ギャップを行っていた時の話になります。

このプロジェクトは、自分にとって、初めてプロジェクト全般を仕切って取り組む案件でした。お客様は美容関連の出版社で、通常の出版社のように取次メインの販売ルートだけでなく、注文の入ってくるルートが非常に多岐にわたっていました。

例えば、美容関連ですから、美容用品を売っている専門商社に卸して商社経由で販売したり、雑誌を置いている美容院から定期購読をいただいたり、そこに通われているお客様の分を美容院経由で注文をいただいたり、またダイレクトに個人のお客様から定期購読のご注文をいただいたりと、通常の本や雑誌の販売ルートとは異なるチャネルをたくさん持っていました。

もちろん、書店さんからの短冊(書籍に挟む二つ折りの細長い伝票)によるバックナンバー注文などもあります。注文形態も様々で、無期限の毎号注文はもちろんのこと、エンド期限付きのオーダー、隔号でのオーダー(2回に1回の注文)、3回に1回の注文など、リピートオーダーにも様々なパターンがありました。

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お客様へのヒアリング

出版社を初めて担当する私は、業界固有の業務知識に精通していなかったので、
とにかく、徹底してお客様から業務の流れを聞き出し、実際にそこで使用している伝票なども見せていただきながら、一つ一つ業務フローにその流れを書いていきました。

週2回ほどのヒアリングを1か月半くらいかけて行ったと記憶しています。毎回の打合せでは、前回聞いた内容をまとめた資料をお客様に提示し、自分自身の言葉でそれを説明して、「実際と異なる部分がないか」を復習するかたちで再確認していきました。当然、資料のボリュームは回を追うごとに増えていき、ページ数も相当なものになっていきました。

ここで私が一番重視したものは、全体を俯瞰できる資料を1枚作ることです。
その一つ一つのイベントに関しては別紙で詳細を説明しますが、とにかく、業務全体をカバーしたものを1枚にまとめることが、お客様にとっても我々SEにとってもお互いの齟齬をなくす最重要ポイントだと思っていました。

自分の部下に お客様業務の流れを お客様の前で説明する

プロジェクトの途中から、私の部下(仮にA君とします)が1名加わったのですが、そのA君に対してお客様の業務の流れを説明する際、あえてお客様の前で自分がそれを説明しよう、と考えました。自らの言葉で説明するためには、お客様の業務を正しく理解して、その一つ一つの意味するところと必然性を理解していないと、A君からの「なぜ、このようなことをやっているのですか?」といった質問にも答えられません。

本来なら、このような質問に答えるのはお客様サイドになると思われますが、その時の私はあえて、私がそれに答える形をとりました。その時にお客様から言われた言葉が、冒頭の言葉です。

「業務の説明がまるでウチの社員のようですね!」

ERP導入を担当するSEとしては、パッケージの機能とお客様業務とのギャップをどう埋めていくか、といったことに最大の知恵と労力をかけるわけですが、その前提として、お客様の業務を漏れなく、正しく把握することがとても重要です。

このプロジェクトは、当初予定よりカスタマイズ範囲が増え、導入にかかるコスト、期間が
かなり増えてしまいましたが、20年以上経った今でも、そのシステムは現役と聞いています。
根幹をしっかり作ればシステムは長持ちする、典型的な例だったと思います。

ERP導入において重要なこと

・フィット&ギャップにどれだけ時間をかけられるかは、各々の事情によって変わるかもしれないが、SEはお客様の業務を漏れなく正しく把握することに意識を集中する

・そこでヒアリングした内容を文書化・ビジュアル化するだけでなく、SE自身の言葉で説明してみることで、どこまで正しく理解できているかを確認する

フィット&ギャップにおいては、遠慮せずにお客様に質問を繰り返し、自分が理解したことを言葉で説明する勇気を持つことで、自ずと道は開けるのではないでしょうか。

次回は、vol.3:「現場の事務を取り仕切っている方、発言力の強い方をお呼びください!」をお届けします。

※本ケースは筆者の経験談であり、すべてのお客様に当てはまるものではございません。予めご了承ください。

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